ポリカーボネートは、熱を加えると柔らかくなり、冷えると固まる熱可塑性(ねつかそせい)プラスチックの仲間です。「ポリカーボ」、「ポリカ」とも称される板状の製品です。ポリカーボネートはホスゲン分子(炭素と酸素と塩素の化合物)と、ビスフェノールA分子で構成されます。日本国内では三菱ガス化学が1971年に量産化に漕ぎ着け、鹿島工場で年間12万トン、タイ工場で14万トン、上海工場で8万トンを生産、国内ではトップシェアの会社です。
光の透過率は85%以上とガラスに近く、ガラスの数百倍にも及ぶ耐衝撃性をもつ非常に割れにくい材料です。実際にはABS樹脂の5倍、塩化ビニール樹脂の10倍、ポリエチレンやアクリル樹脂の50倍にも達するほどの強さがあります。ハンマーなどで強打しても割れないぐらいの耐衝撃性です。
更に熱伝導率が約25%と小さく、紫外線をカットするので屋根材や天井から光を入れるトップライトにも採用されています。この特性を活かした商品は、一般の日常品から工業製品、軍事産業にまで幅広く使用されているのです。
目次
ポリカーボネートの特徴
ポリカーボネートの特徴は、何と言っても耐衝撃性と透明性に優れているということです。特に耐衝撃性はガラスに比べると劣る耐候性、耐久性を差し引いても御釣りがくるほどすばらしいものです。ガラスより劣ると言った耐候性、耐久性も、実用的には充分な性能です。また、加工性に優れているのも大きな利点です。三次元曲面体の加工も実現できるので、住宅用建材にも幅広く用いられるようになりました。ポリカーボネートの特徴は次のようになります。
ポリカーボネートの利点
・プラスチック素材の中では最高度の耐衝撃性がある
・耐久性、耐候性に優れる
・ガラスと同等の透明性がある
・熱電導度が小さく、紫外線をカットする
・曲げ加工、穴あけ、切断などの加工が容易である
・ポリカーボネートを原料にした成形加工品の表面は美しく、光沢がある
ポリカーボネートの欠点
・傷が付き易く、高温高湿の環境下で変色、劣化しやすい
・耐薬品性に弱く、アルカリ剤、溶剤で劣化する
ポリカーボネートの主な用途
特徴に書いたように、ポリカーボネートの突出した特性を活かした用途は多岐に広がっています。日用品や家電製品、建築材料、工業製品、航空宇宙産業など挙げれば切が無いくらいです。
日用品では食器や筆記用具、文房具にポリカーボネートが使われています。透明性を活かしてメガネやサングラス、ゴーグルなどもあります。カメラのや双眼鏡のボディもポリカーボネートがよく使われます。カメラや双眼鏡は野外での使用が多いことから、落としても壊れない強い耐衝撃性が必要なのです。また、戦闘機などのキャノピーや、自動車などのライトカバー、オートバイのヘルメットなどにも。
表面の光沢が美しいiPhone5Cのボディ、継ぎ目の無い一体成形のポリカーボネートです。ボディを成形した後、スピーカーや音量などのボタンを取り付ける穴あけ工程でもポリカーボネートの特徴が光ります。ポリカーボネートの強靭さが、周辺を壊すことなく、この工程の歩留まりを上げます。類を見ない耐衝撃性が家電製品のモノづくりに活かされています。
塗装から敷物まで幅広い用途
ポリカーボネートは熱可塑性プラスチックなので、加工性に優れた特徴をもっています。ホームセンターの建材売り場を覗いてみると、中空層をもつ二層一体構造になったポリカーボネートの板を積んでいました。色彩もいろいろ、デザイン的な特徴から、商業施設の間仕切壁にも使えそうです。また、中空でクッション性もあり、敷物にもできます。
一番多いのは、カーポートの屋根材への利用です。筆者の家の周り、ほとんどが最近の戸建です。住宅ごとのカーポートですが、たいていはポリカーボネートの屋根になっています。確かに紫外線のカット率も高いですから、車の塗装にも優しい素材に間違いありません。そして、屋根の形もお洒落です。住宅建材として、ますます用途の広がる素材だと思います。